ちゆまど―世界は全て君のために―


大獣は呼び掛けに応えず、ぐったりと横たわっていた。


「シンシアさん……!」


「あなたたち……」


「何があった」


駆け寄る私たちを見てか、シンシアさんは目に涙をためていた。


「あいつが……、あいつが、私の召還物たちをことごとく」


大獣の体が透ける。最後まで大獣に抱きついていたシンシアさんだったが、うなだれるようにして手をおろした。


「マスター……」


そんなシンシアさんに寄り添うポチ。見れば、傷だらけだ。


「あなたは、あなただけは、消えないで!あなたがいなくなったら、私……!」


「ええ、消えません。決して。私はマスターのそばにいます」


寄り添う二人からは話が呑めない。どうやら誰かに襲われたらしいが。


聞こうと手を伸ばした瞬間。


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