ちゆまど―世界は全て君のために―
夜、お母さんに絵本を読んでもらったあとに言われた。
「あなたたちは、キャベさん見てない?よく森で遊んでいるでしょう」
「知らないー」
「もう帰らないでしょう」
「そう。もしも、キャベさんを見つけたら家につれてきてね」
はーいと返事した私に対し、お兄ちゃんは何も答えずおやすみなさいとだけ言った。
お母さんが子供部屋を出たあと、私はお兄ちゃんに抱きつく。
「クマさんはウサギさんと仲良くなれるのかな」
「なれるよ、絵本はそういうものだ」
「キャベさんは見つかるかな」
「見つからないよ、一生。あんなことをしたんだ。許すにはああしないと」
難しくて分からなかった。聞いてもお兄ちゃんは詳しく話してくれず、その日は眠りに落ちた。