Star Rain.
ふたつに

終わりの紫

東を見て、西を見た。上なんか向かなくても、このひどい暗雲だ。

晴れてないことくらい、わかっていた。

天気を確認するような、あたしの動作が終わる頃にちょうど、将は戻ってきた。



駐輪場の屋根の下に、ふたり。

毎日同じ感覚でここに待ち合わせして、いつも同じ気持ちで将を見ていた。

だけど今日は、不思議と笑えなかった。

将がこっちへ来るときに目が合っても、将は笑っても、私は。



「これから雨降るらしいんだけど、傘持ってきた?」

「折りたたみなら、あるし」

「マジ?あー俺、持ってきてないんだけど。まぁ、今の内なら大丈夫かな」



変に俯いて、あんまり将の顔を見ないようにしようと決めた。

あたしの中で決めたことが、いとも容易く変えられそうだったから。



自転車の鍵を外す音が、大きく響いた。

どこまでも黒い自転車が、ガシャンと音を立てた。


もうこうしてこの自転車を間近で見ることもないのか、なんてことを考えた。



「聞こえた?」

「え?なに?」

「今月のバイト代、5万いったんだけど」



締まりのない笑顔。きっと誰にも変わらない表情。

そこが楽で、好きだった。



「五万かー・・・いっぱい入ってたんだ?」

「マジやばかったって!」



どのくらいバイトを入っているのかも、興味ないから聞いていなかった。

だから知らない。最近、遊びの誘いも断ってたし。

だからなのかな。

段々冷めていって、一緒に帰ることも、事務的になっていっていることは。
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