巡愛。〜ずっと傍にいて〜(仮)

「あ…っ」



「…あ…。」



結衣さんの家から我が家へ帰る道中、またしても出会ってしまった。


“彼女”に。


俺を見つめる大きな瞳から、俺は視線を逸らした。


…やめてくれ。


どうして今更出会ってしまうんだ。


俺の心を…かき乱すのは、やめてくれ…!


俺は黒のキャップを深く被り、通り過ぎようとした。



「あの…っ忘れてしまったのですか…?」



今にも泣き出しそうな、か細い声が追ってきた。


その声に…俺の中の晴信が、応えてしまった。



「…忘れるものか。君は彼女と生き写しだ。晴信の一番最初の正室、上杉の方にな。」



< 55 / 121 >

この作品をシェア

pagetop