+Black Blood.

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「――零、無花果」



玄関ホールでまた仕事をしていた二人は、律に呼び出された。



「不味いぞ、そろそろ戦争が起きてもおかしくない・・・」

「は、?何それ、聞いたことねぇんだけど。」

「言ってねぇもん。戦争っつったって日本だけだけど・・・。」


ばさ、と律は机に新聞を叩き付けた。



――本州東部と西部の食い違い。


これまで弱き者は桎梏生活を強いられていた元の原因は、ある一人の独占悪徳政治家だった。

公の場で、今起こっている些細な事で女を激昂に奮わせるような、侮辱。
まさしく、女は3歩下がって男を見てろ、と言う昔を思わせる発言。


東部の女の支配が強く、職も全て出来なくなると言う、差別。


徐々に西へ避難する者も居れば、呆気無くその政治家側の者に捕らえられる人間も居た。

だか反面、逃げ切った者も居る訳だ。


その反感が遂に、切れた。

その証拠に、政治家は自殺に追い詰められた。


「まぁ、西部も東部もやってる事同じで無茶苦茶なんだけどな。半分に日本が分裂しているのは知ってるよな?」



はぁ、と律は溜め息をつく。


「・・・不味いな・・・。」


収容所に入っていたせいか、全く外の状況を知らない二人は口を噤む。




「・・・・・軍はどっちに付くんだろうな」


単純な言葉が律から漏れる。
それに反応した零。


「・・・・東部だな」

「ハ?何で?」

「イヤ、何となく。」


ちらりと無花果を見遣れば視線を逸らす。



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