AKANE
「今回ばかりは本気ですよ。言ったでしょう? この国には規制がほとんど無いと。人身売買が平気で行われることでもこの国は有名なんです」
恐ろしくなって、朱音はクリストフの腕にしがみ付いた。見回せば、誰も彼もが悪人に見えてきてしまう。
そして恐ろしいものが朱音の視界に入ってきた。
目の前を横切る荷馬車。後ろには檻が取り付けられ、何人もの薄汚れた子ども達が中ですすり泣いている。
「クリストフさん、あれ・・・」
恐怖で朱音はクリストフに目線を送った。
「アカネさんの察しの通り、売りに出される子ども達ですよ。多くは孤児や身元不明の者達ばかりです。」
クリストフは今朝方調達したばかりの真新しいハットを被り直すと、囁くようにそっと朱音の耳元で話した。
「わたし、何があってもクリストフさんから離れないよ」
クリストフはこくりと頷くと、腕を組みやすいように左の曲げた肘を朱音に差し出した。朱音は大人しく自分の腕をそこに引っ掛けるようにして絡ませると、再び喧騒の中を歩き始めた。
「旦那! どうです、この魔光石は“マルサスの危機”で流出した正真正銘の本物ですぜ。今ならお安くしておきます。美しい彼女へのプレゼントにお一ついかがです?」
ひょろりと痩せた男が、突然ひょいと二人の前に躍り出た。その手には黒い石がはめ込まれたネックレスが引っかかっている。
「悪いですが偽物を売りつけるならば、もう少し頭の悪そうな客にしてください」
クリストフが面倒くさそうに痩せ身の男を避けて、朱音をぐいと男から遠ざける。
「なんと人聞きの悪い! 見ててください! 本物ですから!」
男が首飾りを自らの首に引っ掛け、手をクリストフのハットに翳すと、ふわりと僅かにクリストフのハットが浮かび上がった。
朱音はぎょっとしてクリストフの頭の上に浮かぶハットをまじまじと見つめる。
瞬間、クリストフが思いも寄らない行動に出た。痩せ身の男の首飾りを力任せに引っ張ったのだ。
恐ろしくなって、朱音はクリストフの腕にしがみ付いた。見回せば、誰も彼もが悪人に見えてきてしまう。
そして恐ろしいものが朱音の視界に入ってきた。
目の前を横切る荷馬車。後ろには檻が取り付けられ、何人もの薄汚れた子ども達が中ですすり泣いている。
「クリストフさん、あれ・・・」
恐怖で朱音はクリストフに目線を送った。
「アカネさんの察しの通り、売りに出される子ども達ですよ。多くは孤児や身元不明の者達ばかりです。」
クリストフは今朝方調達したばかりの真新しいハットを被り直すと、囁くようにそっと朱音の耳元で話した。
「わたし、何があってもクリストフさんから離れないよ」
クリストフはこくりと頷くと、腕を組みやすいように左の曲げた肘を朱音に差し出した。朱音は大人しく自分の腕をそこに引っ掛けるようにして絡ませると、再び喧騒の中を歩き始めた。
「旦那! どうです、この魔光石は“マルサスの危機”で流出した正真正銘の本物ですぜ。今ならお安くしておきます。美しい彼女へのプレゼントにお一ついかがです?」
ひょろりと痩せた男が、突然ひょいと二人の前に躍り出た。その手には黒い石がはめ込まれたネックレスが引っかかっている。
「悪いですが偽物を売りつけるならば、もう少し頭の悪そうな客にしてください」
クリストフが面倒くさそうに痩せ身の男を避けて、朱音をぐいと男から遠ざける。
「なんと人聞きの悪い! 見ててください! 本物ですから!」
男が首飾りを自らの首に引っ掛け、手をクリストフのハットに翳すと、ふわりと僅かにクリストフのハットが浮かび上がった。
朱音はぎょっとしてクリストフの頭の上に浮かぶハットをまじまじと見つめる。
瞬間、クリストフが思いも寄らない行動に出た。痩せ身の男の首飾りを力任せに引っ張ったのだ。