AKANE
「どうしてアカネは貴方に自分の存在を最期まで打ち明けなかったんだろうね。僕にはそれがよく分からないよ・・・。だけど、確かに彼女はついさっきまで僕の中にいた」
「・・・愚かなのは俺だ・・・。アカネはこんなにも近くまで戻ってきていたのに、俺は盲目だった・・・」
 フェルデンは問うた。
「もう、アカネは戻らないのか、クロウ」
「・・・・・・」
 何もかもが遅すぎた。
 フェルデンは自らを呪った。
どうして、ゴーディアへ遣いとして行った時に、彼女の存在に気付いてやれなかったのかと・・・。そして、あの夜、フェルデンは苦しむ彼女を更なる地獄へと追いやった。彼女の首に手を掛け、彼女を自らの手で亡き者にしようとまで考えたのだ。それにも関わらず、傷ついた心で尚も、朱音はフェルデンの傍で彼を守ろうとしていた。自らの最期の瞬間まで・・・。
「だけどね、フェルデン。アカネは貴方を少しだって恨んだりしていなかったよ。彼女は、誰よりも貴方を愛していた。僕がついつい妬いちゃう位にね」
 クロウは黒曜石の瞳で優しくフェルデンに微笑みかけた。
「彼女は幸せだったよ」
 フェルデンは強く目を閉じた。
 今度こそ永遠に失われてしまった少女の面影を、記憶の中を辿って・・・。



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