隷従執事の言いなり


確かに、私の耳には届いたのに。


一生呼ばれる事は無いと思っていた呼び方。


「今、呼んだでしょ?聞き間違いだなんて、言わないで」

私はたった今、これだけの事で天にも昇る気分なの。

それが、間違いなんて…嫌。


「なんとか言ってよぉ…」

『椿様私は『椿さん』


碧が何か言おうとした瞬間、それを遮るように現れた拓真さん。


『遅いから様子を見に来たんだけど……』


なんてタイミングの悪い…。

拓真さんも、お取り込み中だったかな…、と一歩引いて様子を伺っているようだ。


『紀津様、ご心配おかけいたしました。さ、お嬢様戻りましょう』

拓真さんから碧へ視線を戻すと、そこにはもう執事の碧しかいなくて。


私だって、拓真さんのいる前であんな話が出来るわけないのは分かってる。
かといって拓真さんを追い返すわけにもいかない。



「……そうね、戻りましょう」


だから碧の言葉に従って、素直に戻った私だったけど、










何かとても大切なチャンスを逃した気がしてならなかった。









碧の心を開かせる、何かとても大切な。




< 21 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop