隷従執事の言いなり
『あら、椿さん大きくなられて…』
十年後、現在16歳。
今はパーティー会場で愛想笑い浮かべ中。
『隣にいるのは…黒峰君ね。噂通り綺麗ねぇ』
『お褒め頂きありがとうございます。マダム』
隣の碧も、16歳。
私の、専属執事。
…碧の噂は、今では知らない人も少ないという。
執事のくせに主人より目立ってんじゃないかというくらい綺麗な顔立ち。
完璧な立ち振舞い。
………とにかく非の打ち所が無い。
おかげで一度碧をパーティーに連れていけば、私の周りには碧を一目見ようと人が集まってくる。
生意気!!
でも連れてこないわけにはいかない。
「きゃあ…!」
碧は私の専属執事だから。
『どうしましたお嬢様!』
『あわわわ!す、すみません!蕪木様!』
「構わなくてよ。………碧」
平謝りする男性ににこりと笑って、碧の名を呼ぶ。
男性の持っていた赤ワインが、私の真っ白なドレスに盛大に染みをつくっていたのだ。
『かしこまりました、お嬢様』
碧が従うのは私だけ。
だって、碧は私のだから。