隷従執事の言いなり
してやったりのこのニンマリ顔に、いつもなら腹が立つのに。
今ばかりは雰囲気に飲まれているのか、腹を立てるどころかなんだか胸が痛い。
見下したような失礼なことを言われて胸が高鳴るなんて私はいつからそっちの気になってしまったのだろうか。
至近距離で顎をつかまれ、いろんな意味で緊張してしまう。
「エロくなんてない…もん…」
しかしこの主張も、はなから通るなんて思っちゃいない。
だって自分でも決して否定できないからだ。
この雰囲気で、敬語じゃない砕けた碧、それにこの体制ときた。
少なからず私だってそういった気持ちになってしまっている。
『…何考えてんだよ』
クスリと微笑した碧はきっと、私の頭の中を見抜いていて。
考えが見抜かれたことで私はまた追い詰められる。
『やっぱヤラシーな』
「ああああ碧の方がじゃない…!」
このままではいけない。
完全に碧に主導権を握られてしまう。
「碧だっ…て、碧だってヤラシー顔してるもん…!」
でも、主導権を自分に戻そうなんて考えがそもそも浅かった。
『ったりめーだろ?お前とこんな近くにいるんだから』
最も最初から私に主導権を握る権利はなかったのだった。
渾身の一撃もなんなくひらりとかわされ、寧ろ碧の台詞に赤面する。
「もう…!碧の馬鹿!なんなのよぉ…」
お子ちゃまの私は完全にてんてこ舞いで。
最早ジタバタするしか思いつかなくなってしまった。
『…ははっ』
そんな私を見た碧は余裕綽々の笑みを零した。