マザーレスチルドレン

レイコさんに電話しないと

「マスター、レイコさんに早く電話しないと」


呆然としているマスターにハルトがいった。


「ああ、そうだな、レイコのケイタイに電話してみよう」


 マスターは、ヤマサキに携帯を返すと、


カウンターの奥に入り自分の携帯電話でレイコに電話した。


「もしもし、オレだよ、今どこにいる?」


「ああ、ごめん、遅くなって。そうねえ、もう少しで駅前。


あと十分くらいで帰りつくと思うわ」


「待て、まだ帰ってくるな!」


「どうしたのパパ?急に」


「いや、今は理由を話してる暇がない。


取りあえず駅で待っててくれ。


すぐに迎えにいくから」


「一体なんなの? もう、なんだか分かんないけど、


了解。じゃあ、駅前の広場の噴水のところで待ってるね」


「わかった、車ですぐに行くから絶対そこを動かないでくれよ」


マスターは電話を切ると、壁の時計を見上げた。


午後九時二四分。


「マスター、オレも一緒に行くよ」

< 53 / 178 >

この作品をシェア

pagetop