一年と二ヵ月


七海はフッと笑う。

「早紀って、ほんとに
お嬢様って感じしないよね。」

「それ、良い意味?悪い意味?」

「もちろん、良い意味だよ〜!

『普通の人』の気持ち、
あたしはすごい大事だと思う。」

七海は遠くを見て言う。


「あたしは、中2でデビューしてから
普通の生活が出来なくなっちゃった。

値段を気にすることも、
純粋に欲しいから買うことも、
出来なくなっちゃった。」

「七海…」


「なんてね!
ほら、早く値段見て!
値段によっては
他探さなきゃいけないんだから!」

七海は滅多に弱音をはかない。


だから、普段言わない弱音を
受け止めるのがあたしの仕事。

慰めも声援も、そんなの必要ない。
ただ、聞いてあげるだけ。

それでいい。


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