一年と二ヵ月
「じゃあ、誰も継ぐ人いないじゃん。」
「1人だけ。」
「え、いんの?
親父さんて甥とか姪とかいたっけ。」
「パパの年子の弟の娘さんがね…」
「いいじゃん!」
拓真が横やりを入れてくる。
「最後まで話聞きなさいよ。
その娘さんがね、
もうすぐ子供が産まれるんだって。
で、その子がもしかしたら。」
「なるほど。
なんか色々あるんだなぁ〜」
流れる景色を見ながらしみじみと言った。
『風見ー、風見でございます。
足元にお気をつけください。』
学校の最寄り駅に着いて、電車を降りる。
なんとなく話すこともなくなって
2人とも無言で歩く。
「……あれ?拓真くん?」
後ろの方から声がして振り向くと、
そこには可愛い女の子が立っていた。
「智香…」
「久しぶり!
日本に戻ってきてたんだね!」
智香と呼ばれた女の子は
あたしとは違う制服を着てる。
多分、近くにある名門女子校の。
「あぁ、ついこの前戻った。」
「カッコよくなってたから、
一瞬誰か分かんなかったよ〜」
智香ちゃんは拓真の古い知り合いっぽい。
拓真から女の子絡みの話は
聞いたことないなぁ…。
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