華と…



雄一の突然起こる大胆な愛情表現は、今に始まったことじゃない。



時折見せるそんな彼の表情を、わたしは期待していたのかもしれない。


店に入るなり、

「お父さん、華の部屋に上がらせて貰います」

父にそう告げると、彼は奥の住まいの方へわたしを抱いたまま進んでいった。


呆気にとられた父の顔が可笑しかった。

坂本の言う通り、父も雄一のことを認めているのだなと感じた。


雄一は軽々とわたしを抱き上げたまま階段を上った。

わたしの部屋は二階の奥だ。

最初に雄一が店に上がった日、一度だけ招き入れた。

それ以後、彼は二階に上がろうとはしなかった。



それはきっと、彼なりの覚悟があったからに違いない。

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