武闘派
「やっちゃん、あのね…」

やっちゃんの優しさを目の当たりにすると、自分の我儘さが余計に目についてしまう。

『ん?』

「あの…」

急かすわけでもなく、ただじっと私が話し出すのを待ってくれる。

「さっきは、ごめんね。」

『気にするな。俺が強引だったんだよ。』

「ちがっ、やっちゃんは心配してくれたんだもん。」

それなのに私は…

「それに、プールで助けてくれてありがとう。」

『うん。』

やっちゃんの声を聞いただけで、私は少し冷静になれたんだよ。

「助けてくれたのにちゃんとお礼も言わないまま、心配してくれるやっちゃんを邪険にしちゃってごめんね。」

『うん、良いよ。…それに泣くな。』

どうして?

どうしてやっちゃんには分かってしまうんだろう。
< 63 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop