追いかけっこ(仮)
「華恋、あの男は、華恋の何?」
“怪盗V”の姿で、
私の名前を呼ぶ風音の瞳に、私はハッとした。
「あの若い男、華恋のこと、呼び捨てにしてたわ。」
「……。」
「私を捨てるの?!」
風音は、ヒステリックに叫ぶと、
私に鋭い視線を向ける。
伊次くん……、龍樹が危ない。
私は直感的にそう感じた。
「っ、彼は……、」
「聞きたくないッ!!」
風音は近くに置いてあった、
コーヒーの入ったカップに手をかけた。
「華恋、貴女は私のもの。
他の誰にも渡さないんだからッ!!!!」
その言葉と同時に、私に向かって飛んでくるカップ。
私は、ひらりとかわした。