戦場のガールズライフ~派遣社員奮闘編~
またまたフロアにざわめきが走る。それを気にもせず山田部長はさくさくと私の前まで歩いてくる。私もイスから立ち上がった。慌てて立ち上がったせいで私の足とイスの足が引っかかって、思わずコケそうになる。そんな私を、


「ああ、ええよええよ、そんままで」


小動物、リスやヤマアラシ系を思わせる歯を見せて笑った。


「ごめんな、すぐに行かなあかんのやけど、顔だけでも見ようと思ってな。お疲れさん」


「わざわざっ…ありがとうございます!」


差し出された手を迷う間もなく取る。私の右手を包み込むように左手を添えてくれた暖かさに私も左手を重ねて返した。


周りにどう思われてもいい。どうせあと30分しかここにいられないんだから。遠慮なんかしていられない。あとで「ああしておけば良かった」なんて後悔している余裕ないんだから。


「あ、あの、待ってください。これ、ほんの気持ちなんですけど…」


「本当だ、そう書いてあるな」


危うく忘れる所だったお餞別、「ほんの気持ちです」と書かれてあるクッキーを渡すと、それは無事山田部長の作業服のポケットに収まった。私はすっかり安堵する。その証拠に鼻の奥が湿る。

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