戦場のガールズライフ~派遣社員奮闘編~
配り終えて余ったキットカットはおやつボックスに入れた。大久保さんの机にあるそれは、原価管理室の人なら誰でも食べてもいいという物だ。夜遅くまで仕事をしている人たちの小腹を満たしてくれるおやつボックス。私も散々お世話になった時期がある。


席に戻って最後のメールチェックをした。一通だって読みもらすようなことはしたくなかった。パソコンの反応が遅い時は荷物を片付け、工場内に歩く時の安全靴と帽子はそのままでいいって言ってくれたから放置しておく。


あとは、あとは…ええと?


「そうだ、ロッカーの鍵!」


だけど、まだロッカーには荷物があるんだった。とりあえず、鍵についているキーホルダーを外す。ペットボトルのオマケとしてついてきたマスコット。随分とくたびれて色もはげちゃっている。毎日持ち歩いてたしね。


紙袋に整理しながら上手に入れている余裕はなかった。もう、入ればどうだっていい。放り込め、放り込めとばかりにざかざかと片付けていると、


………5時のチャイムが鳴った。


何ともあっさり終わりを迎えてしまった。


最後だって言うのに余韻に浸れないばかりか、荷物をしまう私の手の速さはまるでスーパーのタイムセールに群がるオバチャンのようだと思った。


いかん………なんか面白くなってきた。


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