らくだのあいだ
 それからしばらくジャパンテレビは意図的に見ないようにしていた。私はカメラ映りが悪い、ましてやろくにセットもしていない普段顔の自分の姿をテレビでなんて観たくない。
 2週間後、ジャパンテレビから電話がかかってきた。そういえばインタビューの後、名前と連絡先を教えたんだっけ。
 「先日は街頭インタビューにご協力ありがとうございました。あのインタビューは15日のニュースエキスプレスで放送いたしました」
 そっか。私の小さな主張が電波に乗って全国に流れたか。
 「実はあのインタビュー、放送で使ったのは1分弱なんですけれど、あの答えてる人は誰だという視聴者からの問い合わせがありまして…」
 はあ?私は犯罪者でも家出人でもない。探される覚えはないはずだが。
 「まず、あなたのインタビューがとてもユニークだったので、その喋りで老人ホームを慰問してほしいそうなんです」
 たった1分観ただけで慰問に呼ぶとは。
 「あともうひと方、テネシー岸田さんてご存知ですか」
 頷く。鞭やらローソクやらを多用したギャグを披露する女性ピン芸人だ。
 「彼女があのインタビューを偶然みまして、よっぽど気に入ったのか、是非あなたとコンビを組んでギャグを見せたい、と」
 ちょっと待て。話を統合すると、老人ホームでテネシーに鞭打たれ、蝋垂らされ、ってことか。
 「それでですね、老人ホームとテネシーさんにあなたの連絡先を教えても構わないでしょうか」




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