プラスマイナス、
第四章

消失




「いなくなっちゃった……って…」



紘奈はなにも言わなかった。

こんなに沈んでいる紘奈を見るのは初めてだ。


もしかして置いていかれた?

いや、まさか。だとしたら紘奈が残る理由がない。



わからない。

だって、一昨日に会ったんだ。

みんなで動物園に行くって言ってたんだ。


「みんな、どこに…」


途方に暮れてそう呟くと、紘奈がしびれを切らしたように勢いよく立ち上がり、外へ飛び出した。



「えっ、ちょ、紘奈、待って…!」



急いで追いかけた。

外はもうどしゃ降りだ。また風邪を引いてしまう。



紘奈は雨に濡れ、孤児院の前で立ち尽くしていた。

背を向けているので表情まではわからない。



「ひ、紘奈…、濡れちゃうよ…」



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