涙のスイッチ
迪也くんは…。


迪也くんはあたしを何も持って…ない。


猫もコロッケもイチゴミルクも持ってない。


必要なの?


手を引いて歩いてくれる事や、気持ちをリンクさせる事よりも大事な事なの?


わからない。


わからないよ…。


「なぁ、美和ちゃん」


泣いてしまいたい。


迪也くんに頭をポン、とされて泣いてしまいたい。


今すぐ迪也くんの声が聞きたい。


旭くんの言葉を聞く前に。


迪也くんのたった一言が欲しい。


「美和ちゃん、好きだ」


そう言って潤んだ目の旭くんが近づいて。


あたしの唇に旭くんが重なった───


「オレとつき合ってくれるよ、な?」


何も言えなくて。


あたしはホテルに向かって走った。
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