恋する事件簿【完】
第2部 ③〜電話〜



「めいちゃん、退院おめでとう!」



「…ありがとう」



退院して、久々に出勤。

暑いのに、マスクと長袖は外出時には欠かせない。

次長の手回しにより、クビにも謹慎にもならなかった井川に見向きもせず、私は溜まってた資料を整理して行く。

井川と那維斗の結婚話も消えてないらしく、私はもう、現実から逃げる選択しかなかった。

ようは、別れるって事。

お祖父様の手を借りるのは、嫌だった。

あいつと同じ真似は、したくなかったんだ。



「ごきげんよう!」



「お母さんっ!?」



高らかな声と、母親のすっとんきょな声が耳に届く。
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