喫茶冬景色
娘が生まれた時にはね、うれしさでいっぱいだった。
 
この子もいつかお嫁に行くのだろうと思うと泣けてきたね。
 
「0歳児の前でですか?」
 
「父親ってやつはね、娘に恋をしているものなのさ。」
 
3歳くらいかな。
 
私の娘じゃないことを確信したのは。
 
私はね、よく外にいるから今は日焼けして黒いけどウチの家系には誰一人色黒の人はいないんだよ。
 
当時は一公務員だったから私も白いままでね。
 
もちろん妻の方もね。
 
娘だけが黒かったんだよ。
 
そのくらいの年になって娘が聞くようになったんだ。
 
「どうして私は黒いの?私もお父さんみたいに白かったらよかったのに。」
 
ってね。
 
娘はね、私と同じって言うとよく喜んだんだよ。
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