天使のキス。
「だから、愛里。
そんな顔するな」


「もう!健ちゃんっ!!
変なこと言わないで。
今のあたしには、冗談なんか聞く余裕ないの!」


「はいはい。
わかりました。
ごめん、ごめん」


くすっと笑いながらあたしの頭を撫でる健ちゃんの手は、優しくて、あたたかくて。


あたしは、気持ちがホッと休まるのを感じた。



あの日――…


悠に会った最後の日。


家に帰ると、悠の荷物はすっかり…跡形もなく部屋から無くなっていた。


それを告げると、リビングでママが涙ぐんだ。


「悠くんのお祖父様…
亡くなられたそうよ…」
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