嘘婚―ウソコン―
人事削減――いい言い方をするなら、こう言うことである。

早い話、そして悪く言うならば…クビだ。

突然のクビ宣告に衝撃を受けている千広に、
「小堺さんも一生懸命頑張ってたんだけど、人事削減となると仕方がないんだ」

申し訳ないと言う顔をして、大前は続けた。

彼の言葉に、千広は何も言えない。

何も言えない千広に、大前は話を続けた。

「8月いっぱいまで働くと言うことで、いいかな?

小堺さんも、次のバイト先を探す時間があった方がいいと思うから」

そう言った大前に、千広は首を縦に振って返事するしかなかった。


歩道橋の階段を1段のぼったら息を吐く。

さっきから、その繰り返しだ。

バイトが終わったと言うのに、今から葬式に行くような気分だ。

「今日は元気がないな」

その言葉に視線を向けると、陽平だった。

気がつけば歩道橋の真ん中にいた。
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