嘘婚―ウソコン―
「どうして、あたしを誘ったんですか?

周さんの事務所で働かないかって」

そう聞いてきた千広に、
「妻だからだろ?」

陽平は返事をした。

「いや、そんな意味じゃなくて…」

千広は考える。

どう言ったらいいのだろう。

つまり…簡単に言うならば、何故選んだのが自分なのか。

他の人だっていたはずなのに。

何故だか考え込んだ千広に、陽平は息を吐いた。

「紙のうえの関係だとは言えど、その繋がりは深いもんなんだよ。

お前が思っている以上に」

淡々と、陽平が語るように話した。
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