嘘婚―ウソコン―
「どうするの?」

ハートに声をかけられ、千広は我に返った。

(どうするって、何が…?)

ハートは続けて、
「陽平の過去を聞いてどうするかは、ヒロ次第だよ。

それをネタに使って脅すなり何なり、それはヒロの自由だよ」
と、言った。

(あたしの自由…?)

そんなことを言われた千広は、戸惑うことしかできなかった。

戸惑っている千広に、
「タクシー、表に出しとくから帰りたければいつでもどうぞ」

ハートはそれだけ言うと、出て行った。

千広は…たった今聞いてしまった陽平の過去を、どうすることもできないでいた。

(知らない方がずっとマシだったかも知れない…)

千広は、後悔していた。

「脅すって…ハートさん、意外と怖い人なんだな」

小さく呟いたその声は消えた…けど、心の中で渦巻いている後悔は消えなかった。
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