嘘婚―ウソコン―
千広は息を吐くと、ピザをかじった。

「……熱々の方がずっといい」

一言呟いた。

モソモソとピザを食べながら、窓の外に視線を向けた。

月が出ていた。

今日の月は半月だった。

「そう言えば、あの時も半月だったっけ」

あの時とは、陽平に離婚を要求した日の夜のことだ。

あの時も、月は半月だった。

あの時の陽平の印象は最低で、一言で言うなら話にならないが正解だ。

彼の飄々とした性格に振り回されたと、千広は思い出しながら半月から陽平に視線を向けた。

陽平は眠ったままだ。

その寝顔に向かって、
「選んだ相手があたしじゃなかったら、あなたはどうしていたんですか?」

千広は質問を投げた。
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