嘘婚―ウソコン―
「お前もいい年齢だ、結婚した方がいい」

そう言えばあの時もそうだったなと、陽平は5年前の出来事を思い出した。

食事した店の場所は違うけど、父親がこうして見合いを勧めてきたのは一緒のシチュエーションだ。

5年も前の昔の出来事に、陽平は笑いそうになった。

いつも忙しい父親がわざわざ時間を割いて自分を食事に誘ったから、何事かと思ったら見合いの話である。

しかも父親も父親で、懲りてないらしい。

5年前の見合いは、相手の駆け落ちが原因で破談になった…と言うのに。

「今度は相手の女性に何の問題はない。

つきあっている男もいなければ、好きな男もいない」

父親が言葉を続けた。

だから見合いをしろ、ってか。

本当にあの時と同じシチュエーションだから、陽平は笑いそうになった。
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