嘘婚―ウソコン―
「よっ」

陽平だった。

(こいつ…!)

千広は怒鳴りたい気持ちを押さえた。

陽平はドアを閉めると、千広がいるバーカウンターに歩み寄った。

「結構絵になってんじゃん、ヒロがバーテンダーに見える」

フフッと笑う陽平に、千広は意味がわからない。

陽平は椅子に座った。

自分の目の前に座ったのはわざとだろうか?

「――何の用ですか?」

千広は言った。

「用って…用がなくてもきちゃダメか?」

そう言った陽平に、
「別に…」

千広は何も言えなかった。

用があったからきたことくらい、わかっている。

でも、陽平は一体何の用できたのだろうか?
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