zinma Ⅱ

新しい世界




ーーー。



ーーーーー様。



ーーシギ様。









ゆっくりと、目を開ける。


自分の目の先には、見慣れた天井。


そこはさっきまでの朱く薄暗い祠の中ではなく、その奥にある自分の寝室だった。



「シギ様。」


声がかかったほうを見ると、自分が寝ているベッドの脇に、いつも世話をしてくれている老人が立っている。

ほっとしたように息をついてから、真剣な顔になり、


「シギ様。どうか、驚かれませぬよう。」


と言って、鏡を取り出してくれる。



ベッドに横になったまま、とりあえずその鏡を受け取る。

老人にうながされ、まだ少しぼーっとしたシギは、何も疑問に思うことなく、その鏡をのぞく。



それを見たとたん、はっきりと目が覚めた。




そこにうつる自分。



一瞬それが自分だとはわからないほど、変わっていた。



さっきまでの5歳ほどの少年の姿は消え、少し骨張った、青年の姿になっている。

見たところ、16、17歳ほどの、まだ少しだけ少年らしさの残る顔だ。



しかしはっきりと目覚めた頭が、この状況を説明してくれる。



そして上半身を起こす。


老人が寝るようにうながすが、それを制す。



とても身体が軽いのだ。


たしかに一気に成長したために、大きくなった身体の重みは感じるが、そうではない。


完璧に消えたのだろう。

『呪い』が。



それに、両親も………。





それに悲しげに目を細めると、


「シギ様…?」


と老人が心配してくれるので、話を変える。



「客人…あの旅人は?」


声もかなり低くなっていることにかすかに驚きながら、聞く。

それに、

「シギ様が倒れたと私に知らせに来てから、お帰りになりました。」

と老人が答える。



シギはそれに、少し考えるように目をふせる。

帰ったわけではないだろう。

おそらく森だ。


探せ、ということか…






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