トリップ少女

後日談


若菜の初めてのトリップが終わった



帰宅後、アルスランは例のごとくベッドの上でお菓子を食べながら、愉快そうに尋ねた



「おう、どうだった。初めての旅は」



「なんか…想像してたのと違う」



アルスランは若菜が目線を上げようとしないのが少し気にかかった



「楽しくなかったのか?」



「楽しくなかったわけじゃなかったんだけど…」



言いよどむ若菜にミランが助け船を出した



「この子ったら、物語に入り込みすぎちゃったのよ」



「どういうことだ?それが醍醐味なんじゃないか」



アルスランは心の底から不思議そうに聞く



「アルスランには分からないでしょうけど、それが人間って生き物なのよ」



ミランが小悪魔的にウインクをしてアルスランを遮った





「私、もう寝るね」


若菜は目が半分閉じかけている



「おやすみなさい。よく休んでね」


「おやすみ」




「あ、若菜待て」


アルスランが思い出したかのようにベッドに横たわる寸前の若菜を止めた



「なに?」


「お前はまだ、トリップ少女を続ける気はあるか?」


「え?」


若菜は眠たげな眼をこすって聞きかえした



「だーかーら、まだ物語の中に入ってみたいかって聞いてるのよ」


ミランが仕方ない人ね、と言って説明した



「そうだ。トリップは今回でわかったように、必ずしも楽しい気持ちで終われるとは限らないんだ。それでも続けるか?」






若菜はしばらく考えた後、おもむろに口に出した


「やりたい。確かに楽しい気持ちばかりではなかったけど…やっぱりやってよかったと思うから」



アルスランは納得したように笑って、


「そうか。なら今度は僕が若菜の為に物語を探してきてやろう」




「よく休め」


そうしてアルスランは若菜の額に左手を当てた


若菜はみるみるうちに深い眠気に襲われて、意識を手放していた



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