青春の蒼いカケラ
入る。
 そのまま二頭は縺れ込むようにゴールを駆け抜けた。

――勝ったのはどっちだ――

 しばらく点滅していたボードに『確定』の文字が灯る。
 帰りの電車の中で、僕らは今日の反省会をしていた。
「なおちゃん。今日は本命レース“だけ”は勝てたんだからいいじゃないか」
「まぁあれだけは本気で狙っていたからな」
「元気出せって。明日があるさ」
「……」
 その後、終始無言のままアパートに戻った僕は、勤務表を見た。
 今請けている仕事を熟せば二十万以上になる。
 僕は当分の間、本業に集中する事に決めた。しばらくはトラック運転手でいい。
 そう思った、二十一歳の初夏の夜だった。

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