青春の蒼いカケラ
第三章 変奏曲《》
 カッちゃんから連絡が行って、青森の伯父さん夫婦が車ですっ飛んできてくれた。
 僕に両親がいない。
 母は高校の卒業を待たずに癌で他界し、父はその後を追うように排ガス自殺を図った。
 伯父夫婦と祖父母に見守られて、眠るように逝った。思えば最初から温泉旅館の経営など、父には向いていなかったのかも知れない。
「なおちゃん、着替え持ってきたよ」
「ありがとう……」
 伯父は心配して『大丈夫か?』と何度も聞いてきたが、僕には『はい』とも『いいえ』とも答える事が出来なかった。未だ続く幻聴との闘い。半日ほどして伯父夫婦が引き上げても、僕には見送りに行くだけの気力は残っていなかった。
 毎朝目が覚める度に打たれる注射。無理矢理誘う為の睡眠薬。そして日々繰り返される悪夢との闘い。
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