ちぐはぐ遠距離恋愛




『“幼なじみ"なんて、ただの飾り付けの言葉だよ』




そう言ったのは、誰だっけ?




これを聞いた時のあたしはまだ二年生…。


ものすごく嫌な気持ちになって、気分が悪くなって…。





もうどうしようもないくらいに落ち込みそれを否定してた。




その理由はきっと、“幼なじみ"という鎖が外れてしまったときの恐怖感があったから。




“幼なじみ"が、“幼なじみ"ではなくなってしまったその時。


あいつはあたしからどんどん離れていって、もう関係ない立場になる。
それが、ほんとに怖かった。



「真白……?」



不安そうに言った奈緒美があたしの頭を撫でる。



「幼なじみになんて…なりたくなかった」



あたしの小さな声は、奈緒美にだけ届いて空気に溶けた。




今でも、あの言葉が焼き付いて離れない。

一生残るかもしれないその言葉は、あいつの笑顔を見る度巻き戻される。




『ただの飾り付けの言葉』

これを今では違う意味で否定しているのも、あの言葉のせい。




あの言葉が、あたしを縛り付けて離さない。



遠回しに言われた、
『村野をとらないで。あの人はあたしのもの』のサイン。





忘れられない、遥菜……

あなたの宣戦布告。







『村野は幼なじみは恋愛対象外だって言ってたけど…………』







そんなこと、




信じたくない。




でもそれを否定できるものも何もない。






あたしは、




あいつを諦めなければならないのかもしれない。



『幼なじみって、いいよね?いつでもあえるじゃん』

“幼なじみ"という居心地のいい場所をとるか、



『告ったらそうじゃなくなっちゃうね…』

それを捨てるのかは。





『あ、これは真白が決めるんだった』





遥菜の言うとおり、



あたしの選択しだい。







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