ちぐはぐ遠距離恋愛

失われていた想い




あたしの影の横に、もう一つ同じものが並んだ。

(…え…?)

ビックリして顔を上げる。


「お前、いい加減にしろよ」


低い声に体が反応した。


「鎌瀬くん…」

「八重島の言う通りなんだけど」


真剣な目つきだった。

―――――息をのむほどの……


「お前さ、本当に知らなかったのかよ」

「何が?」

「大野の気持ちだよ」


言い方からして、怒りが篭っている。

ということは、


きっと鎌瀬も真白ちゃんのことが―――



「気づかないわけないよな?何年一緒にいたんだよ」

「……知らねぇよ」

「……のなら…れよ」


鎌瀬くんの口は震えていた。

彼に一歩近づいて、衿元を掴んだ。




「大野にあんな顔させんなら、俺にくれよ!!」




鎌瀬くんの真白ちゃんへの気持ちが、全てそこに集まっていた気がした。

想いだけじゃなく、悔しさとかも含まれたそれは余韻を残して響く。

諒太の表情も、心なしか険しくなった。


「そうだよ…諒太は真白ちゃんに愛されてるんだよ??真白ちゃんがずっと好きなのは、紛れもなく諒太なんだから!」


両想いになったときは、嘘かと思うほど信じられなかった。

喜びをも通り越す、言葉では言い表せないものが体中に生まれた。

一度傷ついた心を癒すにはきっと十分なはず。


だから――――



「だからもう、これ以上真白ちゃんを苦しめないで……っ」



あの子に寂しい思いをさせないで、

あの子の中にもう一度“恋”を存在させて、

あの子の愛を受け止めて、諒太の愛を注いであげてよ………




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