ちぐはぐ遠距離恋愛

Long amour de la distance incohrent




二回目のコール音が右耳に響く。

同時に左耳にはあたしの心臓の音が休むことなく聞こえていた。

プルルルル……


(……三回目)


これが鳴り終わって、出なかったら切ろう。

そう決めたあたしにとっては苦痛の数秒間だった。



プルル……ガチャッ


『………もしもし』


低めのトーンだったけど、とりあえずは一安心だった。

あたしは深呼吸をして喋りだす。


「もしもし…彩夏?」

『…うん』

「今、平気?」

『……うん』

「この前は、ごめんね」


自室にあたしの声は空気に混じって溶け込んだが、彩夏には届いたらしい。


『どうしてそう思うの?』


返ってくるであろうと予想していた返答にあたしは静かに笑みを零した。


「悪いことしたと思ったから」

『どんな?』

「あたしが間違ってたんだよ」

『何で?』

「…………」


なにも悪くない携帯を睨む。

ケンカなんて久しぶりだったけど、


(まさかここまでしつこいとは…)


緊張はすっかり溶けたのだが、変わりに焦りというものが姿を現した。


「彩夏の言うとおりだった」

『……』

「あたしはあたしだったよ」

『………そう』

「でも、それだけじゃなかった。色んな人に色んなこと教えてもらった」

『えっ』

「危うく遥菜になるとこだったよ」


あたしの言葉に彩夏はきっと首を傾げているだろう。

『意味が分からない』と受話器の向こうで小さく聞こえたから。


「だからね、告白はする」

『するの?!』


テンションが上がったらしく、いつもの彩夏になった。

そんなことにあたしは肩の力を抜き、ベッドにねっころがる。



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