若恋【完】


そっと両手でお腹を触ってみる。

いつもの体と何も変わらないのに、小児科の先生が話してくれた、『お腹の赤ちゃん』を意識してしまう。


『んー、そうね。80%ってところかしら』



わたしのお腹の中には奏さんの赤ちゃんが80%の高い確率でいる。かもしれない…




「入るぞ!」

「え?きゃぁ、奏さん!」

ボンヤリとお腹を擦っていたわたしの後ろの扉が開いて、鏡越しに奏さんの上半身裸の姿が見えて思いっきりどもった。

「うわ、や、ちょ、奏さん!」

「なんだよ。まだ入ってないのか」

いきなりの侵入者にわたしの顔が熱くなる。

ひとりで入るって思ってたからびっくりして…



「りお、今お腹を押さえていたみたいだが…痛むのか?」

「―――え?
あ、あの、違うよ」

「そうか?…それなら別にいいんだが。なんか気になることがあったら言えよ」


「―――うん」


< 218 / 417 >

この作品をシェア

pagetop