若恋【完】



「絶対に外すなよ」



胸のポケットから無造作に取り出したものを左の薬指に納める。



「こ、れ?」

細くて艶消ししてる白金のリング。

前に奏さんと榊さんと仁お兄ちゃんと買い物と映画に行ったときに、四つ葉のクローバーのネックレスを買ってもらった。

その時に見つけたリングに似てる。

ショーケースにペアで並んでてふたりで着けたいって思って見てたんだ。



「こ、れ?」ぐすっ

「嫌か?」


そんなわけないじゃない。
だけど。

これって…



わたしの指にはめられたリングと奏さんの瞳を交互に見る。



「りおの両親からはこれを書いてもらってきた」

「?」

胸のポケットからスッと抜き出してわたしの手に握らせる。

「?」

きれいに折り畳んだ紙。

開くことに戸惑ってたら奏さんが
「開けてみろ」
って、促した。




『婚姻届』

カサッ。

開くと、妻になるひとの欄以外はすでに埋まっていて…
確かに奏さんの直筆で夫になるひとの欄に記入されていた。




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