若恋【完】



鏡の中の彼女は片方の手でわたしの髪を掴みあげた。

痛っ!

彼女が何を言ってるのかわからない。
わたしをどうするつもりなの?


「裸にして山にでも捨ててきたいところだけど、あなたを傷つけることは仁が許さないの。無傷で仁に引き渡すことになっているわ」

「………どうして?なんでこんなこと…」

「あなたが現れて奏はわたしに振り向きもしなくなったわ。許さない。わたしのプライドをズタズタにした奏もあなたも許さない」

バシッ
わたしの頬を叩いた。


「あなたが憎くて八つ裂きにしたいと思っていたところに、仁があなたに執着していることに気づいたの。
仁がわたしに拉致を持ちかけてきたのよ。驚いた?
だからわたしは今あなたのそばにいることができるの」

「…仁さんがわたしを?」

うそ。
そんなわけない。


「奏からあなたを奪いとるつもりよ。あなたは仁にめちゃめちゃにされるの」

ウソよ。そんな…そんなこと信じない。

< 96 / 417 >

この作品をシェア

pagetop