危ない家庭教師〜美男兄弟の誘惑〜
「アヤッペ……」


「ん?」


「恥ずいから、放してくれ」


そう言われて手を緩めたら、涼は私の胸から顔を上げ、優しい目で私を見つめた。


「また泣いてんの? おまえ、大袈裟」


「だって……」


「でも、サンキューな? 俺のために泣いてくれたの、おまえが初めてだよ」


そう言って涼は、指で私の頬を伝う涙を拭ってくれた。


「綾子……、って呼んでいいかな?」


「いいよ」


「キス……していいかな?」


涼の言い方が自然だったのと、吸い込まれそうな澄んだ瞳で見つめられ、私は抗うことなくコクッと、小さく頷いていた。


涼が顔を少し傾けたと思ったら、私の唇に柔らかくて温かいものが触れた。


それは正しく、私の唇がまだ覚えていた、涼の唇の感触。


それを嬉しいと感じる私が恥ずかしくて、顔を反らそうとしたら、涼に頭を押さえられてしまった。


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