Addict -中毒-
夕刻になって萌羽と別れて、私は家の近くのスーパーで夕飯の買い物を済ませ、そのまま家路に着いた。
食材を買い込み過ぎたかしら。重い……
藤枝家の邸宅のぐるりを囲む、塀の前でもたもたと鍵を取り出していると、
プ
と短くクラクションを鳴らされた。
慌てて前を向くと、見慣れない青のBMWのスポーツカーが家の前で停車していた。
蒼介の軽自動車を見慣れてるせいか、まるで車のショーウィンドウから出てきたような洗練されたデザインは、私にとって別世界の乗り物のように見えた。
いえ、私だって蒼介の軽自動車とは別に、一台ベンツを所持している。
それなのにそのBMが写真の世界から浮き出たように見えたのは―――目の錯覚かしらね。
「やっぱり。紫利さんだ♪家、ここ?」
と、パワーウィンドゥから顔を覗かせていたのは、
啓人だった。
私はびっくりして思わず荷物を取り落としそうになった。
慌てて持ち直して、それでも開いた目で啓人を凝視すると、
「何で!?もしかしてストーカー??」と間抜けな質問をしてしまった。
啓人は車から降りてくると、さりげなく私の荷物を手に取った。
「んな暇じゃねぇよ。帰り道~」
「家この辺なの?帰り道って、仕事は??」
今は夕方の5時前のはず。
こんな早くに帰る仕事ってどんな仕事よ。
そんな疑問を彼は悟ったのか、
「金曜日あのあと紫利さんと別れてから結局呼び出しくらっちゃってさぁ、土日も仕事だったわけよ。おまけに昨日はトラブルがあって完徹」
のんびり答えてちょっと眠そうに欠伸を漏らした。