Addict -中毒-


病室に戻ると、すでに蒼介は戻っていて、彼に怒鳴られた義母はすっかり拗ねてしまって彼から顔を逸らしていた。


義姉が、しょうがないですねぇ、なんて複雑な表情で入ってきた私に目配せする。


私はその視線に曖昧に返した。


彼女の視線の意味するものが何なのか、私にはもう分からない。


同情的なのか、それとも否定的なのか。


だけど100%の善意を感じられない。





義母の病室を辞去して、蒼介はすぐに勤務に戻ることになった。


彼が勤める大学病院まで、彼を送り届け―――


私は、またあの広い家に一人きり。


夜の12時を過ぎても、啓人から連絡はなかった。


薄暗い寝室から窓の外を見上げると―――




神流グループのパーティーの夜、啓人の誕生日……



そして



萌羽の悲痛なまでの告白を受けた―――



あの夜と同じ…


あの輝かしいまでの銀色の月がぽっかりと浮かんでいた。



変よね。


月は本当は、黄色に見える筈なのに。





私の目には、悲しい……冷たい色に見える。




月がそれ自体輝くことのない天体だと言うことを、


太陽の光なしに輝くことができないと言うこと。


そんなことを物語っているようだった。




だけどね



月下美人は、月夜に咲く花なのよ。


月の悲しい光に当てられて―――だけど、その悲しみをすべて吸収するように




鮮やかに咲き誇るあの白い花は―――




別名:ナイトクイーン




悲しい―――――夜の女王




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