記憶の中で… 2


今日のナツ兄はちっとも格好良くない。

式が始まるまでの間、ずっと落ち着かなくてソワソワしてる。

そんなナツ兄は見たくないよ。今まではもっとキリッとして格好良かったのに。

もういいや。こんな締まりのないナツ兄はユキちゃんにあげる。

あ、お式が始まった。

ゆっくり扉が開いて、ユキちゃんがお父さんと腕を組んで入って来た。

裾の長い純白のドレス。ベールで顔を隠して、一歩一歩確かめるように前に進む。

ナツ兄にバトンタッチ。

あ…。ナツ兄の顔。

あんな優しそうな顔、見た事ないよ。ユキちゃんを包み込むように微笑んで…。

あーあ。私にもあんな風に、とろけるような笑顔を向けてくれる人、いないかなあ。




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