記憶の中で… 2


「何だよ、気持ちわりーな。」

「これなーんだ?」

ユキが見せたのは小さなノートの切れ端。『またあした』て俺の字で書いてある。

「これ…あの時の?」

「そう。ナツキが初めてウチに来た時の置き手紙。」

「そんなの捨てろよ。」

取ろうとしたらヒョイッと取り上げられた。

「ナツキってさ、勉強できるのかと思ってたんだよね。英語もドイツ語も喋れるし。で、ノート見せてもらおうと思って見たら、ほとんど平仮名ばっかで読みにくいし、字は汚いしで…。で、折角だから今から教えてあげようかと思って…。この前先生からも、『漢字教えてやれ。』て言われたし。」

何でこのタイミング?せっかく二人になれたのに。わざわざ勉強?…そうだ。いい事思いついた。

「じゃあさ、漢字の勉強頑張ったらご褒美ちょうだい?」

「ご褒美?何言ってるのよ。私の方が報酬欲しいぐらいよ。わざわざ教えてあげるんだから、見返りは期待してるわよ、」

「…いいよ。」

そう言ってニヤッと笑った。




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