記憶の中で… 2


「手紙…。読んでみる?」

それはとっても短い、平仮名ばかりの読みにくいものだった。

《かってにでていってごめん。やっぱりことばがわからないから、たいへんだった。がいこくえいって、いろいろみてくるよ。ひとりまえ…いちにんまえになったらかえる。

ゆきにつたえて。おきてがみしたからさがしてみて。
by natsuki 》

「おばさん?これね、私の宝物なの。見て?」

それはナツキが転校してすぐ、私の家に来た時に置いていったもの。

ノートの切れ端に書かれた、『またあした』。

「ナツキはね、『またあした』て書いておいて、守れなかったの。

この手紙には、『かえる』とは書いてあるけど、『絶対』とか『必ず』なんてちっとも書いてない。約束が守れなかったら困るからかな…。でも遅くなってもちゃんと約束は守ってくれたから、きっと帰って来るよ。だって…だって『一生傍にいろ。』て言ってくれたんだもん。」

涙が溢れた。次から次へポタポタと膝の上に雫が落ちた。




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