My best friend



「おはよー!」



ガラッとドアが勢い良く開かれ、高村くんが教室に入ってきた。


「おはよう、律ー」


「おっはー♪」


久しぶりの学校が嬉しいのか、にこにこと上機嫌に挨拶を交わす。


「中里おはよう」


「おはよー」


まずはひーに挨拶。
そして隣にいるあたしに目を向けると、



「おはよう、伊沢」



ふんわりと優しく微笑んだ。
でも、みんなに向けていた笑顔とは少し違う──大人びた感じ。


いつもの元気いっぱいの笑顔も好きだけど、あまり見たことのないその表情に思わずドキッとしてしまう。



「お、おはよ……」



なんだか恥ずかしくなって、顔を見られないように俯いてしまった。



みんなは変わったって言うけど、本当に何も変わってない。


高村くんにはいっぱいお世話になった。
「もう大丈夫だよ」って……ここで笑顔のひとつぐらい見せてあげたいのに。


こういう時、ひーなら可愛く笑えるんだろうな。


ひーに対する劣等感や嫉妬は前ほどなくなってきてはいるけど、


“ひーになりたい”


という叶わない願望は、いまだ抱えたままだった。



< 184 / 323 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop