ラヴァーズ

├雪色センチメンタル

「あの、写真を撮らせてもらえませんか…?」

「え?う、うん、いいけど」

手を握りあったまま、俺は唐突な申し出に空返事を返してしまう。千秋さんが私が撮るわ、と床頭台の引き出しからなんだか懐かしいポラロイドカメラをとりだした。

「三人で撮るか?」

「あっ、……はい」

微かに照れたように笑う雪夢に愛しさが込み上げる。抱き締められる距離にいるのに、雪夢の愛想笑いが俺を押し留め、現実を突きつける。

「それじゃあ、あたしは向こうに回るね」

俺と反対のベッドサイドに歩いていく華月の動作を目でおってしまった。

「んじゃ、はい、ぴー…す」

ぴぴ、フラッシュが瞬く。そして写真が出てきた。

「え、っと、……トウイってどんな漢字を書くんでしょう?あとカズキさんも…」

「え、…あぁ、」

ポラロイド写真を手に手帳を広げる雪夢。そこにはたくさんの写真や名前が記されていた。

その細かさや、内容の濃さに驚いて息をのむ。

「冬威くん、書いてやってくれないかな。名前を」

千秋さんが微笑む。俺は我にかえって、雪夢がもつ青色のボールペンを受け取り、ここに書けばいいのかと雪夢に確認をとって、井川冬威と書き記した。

「か、カズキさんは…」

「あたしはね、」

と言いながら華月は俺の手からペンを受け取り、特徴的な自体で和井田華月と書いた。

「わぁ、華月ってカズキ、…えっと、すに点々じゃなくて、つに点々なんですね」

「うん」

すごい、と嬉しそうに笑う無邪気な雪夢を目を細めながら見つめた。

彼女は、大分子供っぽくなった。








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