ありふれた恋を。

『好きな人ができたからもう一緒には帰れないって言われたんすよ。』


俺か伊吹かどっちかにしろ。

有佐が倉島に言われた言葉を思い出す。

ただの友達なら一緒に帰ったって何もおかしくないのに、それでも有佐は伊吹と帰ることをやめた。


俺を、選んでくれたから。



『ただ好きだから一緒に居たかっただけじゃないんです。』


伊吹は1度も有佐の名前を出さない。

それでも俺たちの頭の中には間違いなく有佐が存在している。



『一緒に居て安心できるような、そんな存在になりたかったんです。好きになってもらえるのはその後でも良かった。』


あまりにも一途で純粋な気持ちを聞いて胸が痛む。

この気持ちを踏みにじったのは、他の誰でもない俺だ。



『一緒にお弁当を食べてても、一緒に帰っても、誰からも怪しまれない。堂々と一緒に居られる。俺とだったら。』


その一言一言に、心に釘を打ち込まれているかのような鋭い痛みが走る。


こいつ、知ってるのか…?


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