ありふれた恋を。

『だからなーに辛気くさい顔してんの?』

「そんな顔してないよ。」


彩ちゃんは私のお弁当の中から卵焼きを1つ掴んで口に運び、またすぐにメロンパンを食べ始める。



「よく食べるね。」

『食べなきゃやってけないよ本当に。』


いつか私をからかっていたことが嘘のように、彩ちゃんは親しげに私と話す。

むしろ隠し事がなくなってスッキリしたとでもいうように口調もくだけたものになってきた。

そんな彩ちゃんを嫌だとは思わなかったし、仲良くなればなる程彩ちゃんは普通に良い子だった。



『あー 瀬川のやつ何考えてんだろうな。』


彩ちゃんが片想いしている相手、瀬川くん。

こんなに一途な想いを持っているけれどなかなか進展している様子はない。



『夏休みだってさ、花火大会とかプールとかいろいろ誘ったし、その度に浴衣だ水着だって気合い入れてもノーリアクション。普通気付くでしょ?』

「一緒に行けるだけで良いじゃん。」


どうしてそんなことを言ってしまったのだろう。



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